10月9日 In Focus 2




  「夢みたい」



  今回開催中の「 In Focus 2 」を観て、そんな言葉がぷかりと浮かんだ。

  ここで言う 「夢」 とは、夜、眠ったときに見る方のゆめ。

 
 
 
    山本恵子   塩出麻美   竹内かな  
 
  大学卒業後、それぞれに活動し、制作を続ける3人の表現方法は、まったく別々でばらばら。

  あまりにも異質な3人。 

  そんな3人が紡いだ空間は、一枚の白い壁から始まります。

  ほの明るく照らされたそこには、それぞれの絵がつらりと並べられ、私たち鑑賞者に期待と予感を与えてくれま

  す。

    壁を右手に抜けると、そこには伏し目がちにどこかをみつめる白い犬。 

  山本恵子によって描かれた、「優しい犬」

  タイトル通り、おだやかでやわらかな印象の犬。 それは日本画で描かれ、光の加減できらきらときらめく。

  犬の姿勢は良く、前足をそろえてそこにいる。 ただそれだけなのに、うっとりとして、足をとめ、見入ってし

  まう。


  そこからようやく歩を進めると、つぎに出会うのはぶらりと木の枝に揺れる猿。 かわいくさえずる小鳥たち。 

  ぼう、と佇むしまうま。

  
  どの画面も装飾的できらびやか。

 
  だけど不思議と嫌みなものを感じさせないのは、作者の丁寧な筆運びと、繊細な色彩感覚があってこそ成せる業

  だ。

   そして、なによりも作者が、愛をもってモチーフと画面に向かったことがありありと伝わってくることが、そ

  うさせているのだろう。




  「大きくて何が描いてあるのかわからない、なんだか衝撃的な作品。」


  塩出麻美の作品に初めて出くわす人は、こんな感想を持つのではないでしょうか。

  たしかに、ぱっと見、油彩で荒々しく描かれたモチーフが、いったいなんなのか、風景なのか、静物なのか、判

  別できない。

  でも、それでいいんです、きっと。 作者が描き出し、浮き彫りにしたいのは、「存在」そのものだから。


   作者自身が作品を説明する際に使う、 「潜る」 という言葉がやけに印象深く残っている。

  作者は時折自分が描いている作品画面に、「潜る」というのだ。

  画面は紛れも無く平面なのに、彼女は迷うこと無く 潜っていく。

   もぐってもぐってもぐってもぐってもぐってもぐって……………

  画面に向き合い、わたしも試みる。

  潜るというより、のみこまれるような感覚。

  時間とかにおいとか上下左右とか、すべてのものが取り払われて、そこに残るのは梅の種ほどのわたしという

  存在。 

  目の前にあるのは、置き去りにされた作者自身のはずなのに。

  
  そんな奇妙な体験のあと、ふと庭に目をやると、そこには芝生にまぶしく映えるエキセントリックなカキワリ

  が………!
   
   竹内かなの作品群は、ハチャメチャでゆるゆるで、でも確実に無視できない存在感を放つ。

  作品形態は様々で、前述したカキワリに始まり、漫画、絵本、イラストレーション等、幅広く創作している。

  媒体は違えど、どの作品からもそのエネルギッシュなパワーと、それをうまく発散させる彼女独特の特性が相

  まって、スイーっとリラックス状態のまま作品にひきつけられていく。

   作品を何気なく見ているだけで、のびやかで、奔放な気持ちになってしまうから不思議だ。




   こんなにもちぐはぐで、辻褄が合わないというのに、なぜだかすとんと納得して、もう少し見ていたい気分に

  なってしまうなんて。  



    やっぱりわたしの中で今回の展示は、夢みたいなんです。




   

                                 尾道白樺美術館[尾道大学]スタッフ


   


 
   


                                    

 



 


 


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